赤字に悩む「大和ハウスプレミストドーム」コンサドーレのJ2降格で観客減の懸念が 収支はどうなる…札幌市は民間事業者の経営手腕を活用する“コンセッション方式”の導入も検討

赤字に悩む「大和ハウスプレミストドーム」コンサドーレのJ2降格で観客減の懸念が 収支はどうなる…札幌市は民間事業者の経営手腕を活用する“コンセッション方式”の導入も検討

経営の安定化が課題となっている札幌市豊平区の「大和ハウスプレミストドーム」。Jリーグの北海道コンサドーレ札幌がJ2に降格することで、観客の減少が懸念されています。

 今後の収益の行方はどうなるのでしょうか?

 コンサドーレの今シーズン最終戦。退任するペトロヴィッチ監督の花道を飾る勝利を収めたものの、チームは9年ぶりにJ2に降格。

 「降格が決まってしまったが、来シーズンも変わらず今まで通り応援する」

 「コンサドーレのサポーターは、変わらず駆けつけてくれると思う。大和ハウスプレミストドームは間違いなく札幌市に必要なもの」(ともにサポーター)

 サポーターの熱意はあるものの、来季の観客数の減少が心配されています。対戦相手に強豪チームが少なく、有望な選手の移籍などが考えられるからです。

 この20年、コンサドーレの1試合あたりの入場者数は、コロナ禍の時期を除くとJ1在籍時が約1万6000人。

 それに対しJ2降格時は約1万1000人と、5000人ほど減少しています。

 「今後その影響を緩和しながら、事業収支をよくするよう考えなくてはならない」(札幌市 酒井 直人 施設整備担当課長)

 ドームは苦境に立たされています。2024年3月期の決算は、当初想定の2倍以上の6億5000万円余りの赤字。過去最大となりました。

 2027年度までの5年間で900万円の黒字を目指していましたが、断念せざるを得ませんでした。

 「われわれがやろうとしたことが、思うように進まなかったというのは実際の問題。見通しが甘かったというのは抵抗がある」(札幌ドーム 山川 広行 社長)

 経営の安定化に向けて、さまざまな取り組みも。

 「大和ハウス工業」に命名権を売却。年間2億5000万円で4年間の契約です。

 イベントでの集客にも力を入れています。人気アイドルグループ「Snow Man」のライブには、2日間で10万人以上が詰めかけました。

 また、内部を暗幕で仕切り、通常の半分の2万人規模のイベントに対応できる「新モード」を導入。

 3月にはフェス型のライブを開催しました。

 さらに、札幌市は運営のあり方についても検討を行っています。

 現在「大和ハウスプレミストドーム」は市が所有し、運営を第3セクターに委託する「指定管理者制度」を取り入れています。これに対し、民間の事業者に大幅に権限を委譲する「コンセッション方式」の導入も検討しているというのです。

 「民間事業者が裁量権を持つことで、より効果的な運営ができる。収益性を上げ、活性化につながる設備投資もできる」(酒井 施設整備担当課長)

 コンセッション方式は施設の改修や利用料金の設定などで、民間事業者の裁量の範囲が広がります。民間の資金や手法を取り入れることで、効率的な経営が期待できるといいます。

 「指定管理者制度は自治体の委託で、いわゆる“下請け”にすぎない部分もある。コンセッション方式は『来年はこんなことをしたい』と企画したら銀行から融資を受け、運営権をその抵当にあてることができるという特徴がある」(追手門学院大学 社会学部 上林 功 准教授)

 さらに民間の力を活用した事例も。2024年10月にオープンした長崎市の「長崎スタジアムシティ」。

 通販大手の「ジャパネットグループ」が主導し、サッカースタジアムにホテルや温泉、飲食店などを併設。総事業費約1000億円は行政の負担のない、民間事業として実施されました。

 札幌市は「大和ハウスプレミストドーム」周辺のにぎわいづくりについて、2024年度中に方向性を決めたいとしています。

 「雪国の北海道では、ドームが人の居場所になり得るポテンシャルがきわめて高い。トップスポーツのために造った設備を地域に広げる接点として位置づけられれば、多世代の人たちの居場所になり得る」(上林 准教授)

 収益の柱である北海道コンサドーレ札幌のJ2降格。「大和ハウスプレミストドーム」の経営のあり方が問われています。

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